バーは、大人のおもちゃ箱がいい。

色々な話題が、店の中で混ざり合って会話ができあがっていく。
そのバランス感覚がよく、カウンターで互いの存在感と尊厳を
称えあえる客が好きである。

かつての若者たちは隣の大人を見て、その酒の飲み方に憧れた。
場の雰囲気を壊さない。
グラスを置く位置や煙草の扱い。
背筋の伸ばし方さえも緊張しながら真似ようとした。

そうして、時を重ねてきた大人だけが入ることを許される店こそが
本物のバーなのかもしれない。

20年来の常連客が、娘の彼氏を伴って飲みに訪れる。
店主の顔色を見て、安心して帰っていく。

そんなふうに懐深く客を、客観的に見つめる距離感が大切で
自分たちが楽しいだけじゃ半人前。
狭い箱の中で誰もが楽しく飲める知恵と気遣いが要るんだな。
大人には・・・。