巨大洞窟からの目覚めは、春の目覚め
◆CHAMPAGNE-WINE
ドン・ルイナールはドン・ペリニヨンと並ぶシャンパン界の重要人物だ。
彼は、研究や著作を通じて、葡萄のアッサンブラージュ(ブレンド)で造る
シャンパンの基本を広めた。
オーヴィレール修道院に滞在中に病死したため、今も修道院に眠る。
さて、20年来の会社社長が半年ぶりに来店。
ドン・ルイナール・ブラン・ド・ブランが飲みたいと無茶をいう ・ ・ ・ 、
在庫が無い、悔しい。
出せなくて悔しい店主。
次回までにはご用意させていただくということにし、その夜はスタンダードの
ルイナールで我慢をしてもらう。
―――Ruinart ルイナール。
シャンパーニュで最も古いメゾンだ。
創業は1729年。
織物商だった甥のニコラ・ルイナールは、顧客にシャンパンを振る舞っていて、
それがいつしか本業になった。
ルイナールのワインたちが眠るのは、ランスの街の地下、深さと広がりが
半端ではない歴史的建造物に指定されている白亜の巨大洞窟だ。
それがルイナールのシャルドネ・ハウスである。
―――春。
桜が咲きだすと、心浮き立つ酒徒たちはグラスに立ち昇る泡を眺め何想う、
束の間の幸せを想うのだろうか。