吉野
◆COCKTAIL/◆歳時記と花鳥風月
奥山の風はさくらの声ならむ 飴山 實
森閑として人影もない奈良・吉野の道を歩く。
ふっと深山を吹く風の音が聞こえてきた。
あれはきっと桜たちの囁く声だ。
まだ見えていない桜の姿が、我が心いっぱいに、いっぱいに
広がっていく。
―――23時。
ひと足はやく、夜桜見物と洒落こんだ酔客がやって来た。
店主は、グリーンティーリキュールが無いので抹茶リキュールを
代用してシェークする。
カクテルグラスに桜の花を沈めた一杯は・・・、
―――吉野。
1982年、毛利隆雄氏が霞ヶ関のガスライト時代に考案した、ほんのりと
緑がかった透明な色合い。
辛口ながら、桜咲く吉野山のあたたかく木漏れ日のような趣きがある。
が・・・、酒に酔うのか、桜に酔うのか、これは酔う。
◆吉野
ウォッカ 60ml
キルシュワッサー 1tsp
グリーンティリキュール 1tsp
*シェークして、カクテルグラスに注ぎ、塩抜きした桜の花の塩漬けをグラスに沈める。