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NOE Pedro Ximenez

◆SHERRY

 強い酒も、美味しい食事も、優しい言葉も、今夜は何もいらない。
 熱いエスプレッソをダブルで淹れながら、フリーザーの奥から
 バニラアイスクリームを取り出し、別のコーヒーカップに移す。


 カップの
 中の無表情のアイスクリームにゴンザレス・ビアス ノエ30年ペドロ・ヒメネスを
 ティースプーン2杯注ぎ入れる。

 瞬く間に、それまで冴えなかった娘が微かな甘い香りの香水を
 身にまとった淑女となり現れる。



 ―――イスラムの忘れ形見、ペドロ・ヒメネス。

 シェリーに使われる葡萄は白葡萄だけだ、辛口を造る時は「 パロミノ種 」を
 用い、甘口を造る時には「 ペドロ・ヒメネス種 」か「 モスカテル種 」の
 どちらかを用いる。

 ペドロ・ヒメネス ・ ・ ・ 、
 名はカルロス5世に仕えたドイツ人の傭兵「 ペーター・シーメンス 」に由来し、
 16世紀頃にセヴィリア周辺やコルドバを中心としたアンダルシアに広まる。
 この品種はドイツやフランスのリースリング種に近いとされ、パロミノに比べて
 果皮が厚く、過酷な環境に強い。

 ほとんどの場合一度干されてから甘口の魅力あるシェリーに生まれ変わる。

 そんな強い淑女も私は好きである。



 サックをくれ、古いサックを。
 飲めば陽気な妖精たちが現れて楽しく過ごせるし、地球だって楽しくなる。
 それがいいオールド・シェリーってやつさ。
                           ―――チャールズ・トヴェイ



 アイスクリームが無くなったカップに、冷めかけのエスプレッソを
 追いかけるように注ぎ彼女の甘い残り香を残らず飲み乾した。


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BAR ル・ランティエ
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